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執筆者の写真Kunizane Kaneda

作品の値段についてのお話 [JP]





日本刀を作る仕事をしていてよく頂く質問に、

『幾らくらいするんですか』『本物ですか?』『持つのに免許が要りますか?』

などなどがあるのですが今回はその中から値段のお話をさせて頂きます。



日本刀は製作する作品の長さや形状等で値段が変わってくるため、

またデパート等に於ける展示販売時の価格差などに疑問を抱かれる方も居られると思い、

お問い合わせ頂いた時に直接お答えするという形を取らせて頂いておりましたが、

やはり”直接値段を聞く”というのに中々抵抗のある方も多い様です。


そのこともあり、今回当サイト開設に際して過去の販売済作品に関しましては『参考価格』という形でギャラリーに値段を掲載させて頂きました。

例えば 太刀:初桜参考価格¥1,620,000(150万円+税)です。

この作品は平成29年にコンクールで優秀賞を頂いた太刀ですがその後ずっと手元にあり、

一昨年に親方のお客様から応援したいからとご厚意でお買い上げ頂いたものです。


(※この値段は駆け出しの現代刀工の価格で、賞をとるなどの実績によって値段も上がり、無鑑査になれば倍くらいになっていきます。)




刀剣の販売価格には刀身製作、研ぎ、白鞘、鎺(はばき)、登録審査の代金が含まれてこの値段になるのですが、内訳として大雑把に1/3くらいが外注費になります。

(それぞれ職人さんによってお仕事の値段も異なりますので多少前後はします)


では制作費は100万円?原価抜いてもめちゃくちゃ儲かるのでは・・・!?

残念ながら勿論そんなことはなく・・・。


注文打ちの場合、基本的にご注文主様には製作期間として1年を頂いております。

が、鍛冶屋の仕事そのものは太刀で1振りだいたい10日~2週間あれば外注に出すまで

の仕事が完了します。そこから外注に出しても(職人さんの忙しさにもよりますが)

3ヶ月もあれば研ぎ上がりまでいくでしょう。



2週間で終わるものに何故1年の製作期間を頂くか?

それは1振り作って1振りが完成する訳ではないからです。



美術・工芸に限らずどんなものにでも言えることではありますが、

モノが完成するとは、『欠点がなく』『作者として満足出来て』『ご注文主様の理想の作品である』の条件を満たさなければなりません。

その条件を満たそうと思うと、5振りも6振りも、下手したら10振り作っても完成の1振りが産まれない事があります。


欠点がなくても出来が良くなければそれは失敗で、

出来が良くてもご注文主様が納得いかなければそれも失敗となります。


1振り2週間で作っても5振り作れば約2ヶ月、作る分だけ材料の玉鋼も燃料の松炭も減っていき、その間は収入がありません。

当然、5振りで納得がいかなければ6振り目の製作に入ることになります。

制作費が100万円近いのにはそういった理由があります。



現状、僕も生活苦の中でなんとか毎年のコンクール出品作を製作しており、150万円という価格でも次の仕事をまわす資金としてかなりギリギリなのが実情です。

『価格を下げればより売れ易くなるのでは?』というご意見も頂くのですが、

それは製作数を減らし、研ぎなどの外注を頼む職人のランクを落とすという事です。

そうなると作品の質はどんどん落ちていきます。

作品の質が落ちればコンクールの成績もどんどん落ちていくでしょう。評判も落ちます。

まさに負のスパイラルです。


『10本出来て全部売るのが三流、5本売るのが二流、1本だけ選んで売るのが一流や』


修行中、耳にタコができるほど聞かされた親方の言葉です。




100万円以上する作品、決して安い値段ではありません。

ですがどうかこの先も日本刀が残っていくためにも皆様のご理解が頂ければ幸いです。



國真

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